章:高配当株の銘柄分析

インスタのDMで「どうやって銘柄分析をすればいいかわからない…」という質問をたくさんいただきます。
米国の高配当ETFであれば1つのファンドを買えば勝手に分散投資をしてくれるので、銘柄分析の必要はありません。
ですが日本の高配当投資をする場合には自分で銘柄分析をするスキルが必須になります。
ここでは実際に銘柄分析をする時に絶対に見るべき指標と具体的な目安を紹介していきます。
これを見るだけで今日から高配当株の分析ができるようになります

ここを抑えれば銘柄分析マスターになれるよ!
EPS


高配当株投資のポイントは「長期間安定して配当が出せる企業に投資をすること」です。
株主に配当金を出すためには会社の利益がなくてはなりません。
そこでチェックしたいのが“EPS”という項目です。
EPSとは1株当たり純利益のことで、「当期純利益÷発行済株式数」の計算式で求めます。
EPSが右肩上がりでないと継続してお金を稼げていないということになります。



このEPSがどう高配当株と繋がってるの?
EPSが低い企業や右肩下がりの場合、配当金を出す余力がなくなり、減配してしまう可能性があります。
逆に右肩上がりで増えている場合は増配に期待ができるのでかなり大事な指標になります。
また、コロナショックやリーマンショックの時の数字を見るのも大切です。
暴落時にもしっかり利益を出して配当金を出せる企業ならずっと安心して保有していくことができます。
そして暴落時から現在に至るまでEPSが右肩上がりでお金を稼げているかを分析しましょう
ただし、EPSは利益だけでなく発行株式数にも影響を受けます。
たとえば、「自社株買い」が行われ、消却されると発行株式数が減るため、利益が少なくてもEPSが上がる場合もあるので注意しましょう。
EPSの増加が増配に繋がるので右肩上がりであるか要チェック!
1株配当


これは1株あたりどれくらい配当金がもらえるかという指標です。
高配当株投資は配当金を目的にしているので重要な数字になります。
10年、20年先も継続的に配当金を出してくれる企業なのか、また過去に配当金を減配していないかをチェックしましょう。
理想的なのは毎年配当金を増やしてくれる企業ですが、最低限減配をせずに配当金を維持してくれる企業に投資をしましょう。
売上高・営業収益


売上高とは企業が商品やサービスを販売して得た収入のことです。
サラリーマンで例えると年収にあたる部分になります。
売上が伸びているとお金を稼げている証拠になるので、売上高が右肩上がりで上昇していることが望ましいことは言うまでもありません。
売上高は配当金のもとになるので大切ですが、“売上高が高い=儲かっている”ではないので注意が必要です。
もう一つ注目する指標として営業利益があります。
営業利益は、売上高から売上原価(仕入れ費用、原材料費など)と販売管理費(人件費、広告費、家賃、光熱費など)を引いた部分を指します。
売上が上がっていても人件費や広告費、輸送費などに使ったコストを多く使うことで営業利益がなくなってしまっては本末転倒になります。
そのため、売上高と営業利益の両方が右肩上がりで成長している企業が理想的です。
また、売上高の乱高下が激しい企業だと安定して配当金を出すのが難しくなります。
そういった企業ではなく毎年少しずつでも売上高が伸びている企業が理想的です。
毎年売上高が伸びている会社というのは珍しいので10年・20年という長期間で前提的に右肩上がりになっていればOKと考えましょう。
営業利益率・ROE


営業利益率は売上の内、営業利益の割合を表しています。
営業利益は、売上高から売上原価(仕入れ費用、原材料費など)と販売管理費(人件費、広告費、家賃、光熱費など)を引いた部分を指します。
営業利益率は売上からコストを差し引いた後の利益がどのくらい残るのかを見る指標になります。
業種によってバラつきはありますが、営業利益率が高いとそれだけ効率的にお金を稼げていることになります。
たとえば、1回の取引で利益が大きくなる不動産やサービス業は営業利益率は高くなりますが、卸売りや運輸のように薄利多売になるビジネスは営業利益率は低くなります。
それぞれの業種の平均値も見るようにしましょう。
また、ROEとは“自己資本利益率”のことです。
会社が自己資本をどれだけ有効活用して利益を上げられているかを示しています。
ROEは一般的に10%前後が目安となります。
こちらも10%以上あれば優秀な会社であると判断できます。
自己資本比率


自己資本比率とは総資本のうち「返済が不要な資本」がどのくらい占めているかを表す指標です。
自己資本とは株主が株を買って出資した資本金や、利益を積み立てたお金のことです。
自己資本比率が高い会社ほど自分で用意したお金が多いため、倒産しにくい会社と判断できます。
一方で自己資本の対となるのが他人資本です。
これは「返済義務のある負債」で、銀行からの借入金などが該当します。
借り入れを多くしている企業などは逆に自己資本比率が低くなってしまい、借入金を返済できなかった場合は倒産するという可能性があります。
そのため自己資本が多ければ返済不要の資金で安定した経営ができますが、自己資本が少なく借金が多ければ安全性が低いと判断されています。
一般的に自己資本比率は高いほど良いとされており、60%前後あれば優秀と考えられます。
ただし業種全体として自己資本比率が低い業種もあるので、注意が必要です。
銀行業→預かった預金で成り立つ事業のため5%前後でも平均値。
不動産業→不動産取得時には融資を受けるので借金が前提の業種。20~30%でも平均値。
配当性向


配当性向も高配当株投資をするなら見ておきたい指標です。
配当性向は利益の内の配当金の割合を表しており、高すぎても低すぎてもダメです。
配当性向が100%に近づくほど稼いだお金のほとんどを配当金として出していることになります。
そのため配当金を出す余裕がなくなってきていると判断することが出来ます。
銘柄によっては配当性向が100%を超えている企業もありますのでそういった企業には投資をしないようにしていきたいです。
一方で配当性向が低すぎる場合は株主還元に積極的ではないと判断することができます。
ただし、配当性向が低い場合でも事業投資にお金を使っていたり、余裕をもって配当を出していたりと判断が難しい場合もあります。
現金等


手持ちの現金が増えているかどうかをチェックしましょう。
お金を稼いで手持ちの現金が多い企業なら配当金を増やしたり、設備投資にお金を使ってさらに稼ぐ力を伸ばしたりと株主にとっても嬉しい企業です。
営業活動によるCF


“営業活動によるCF”は本業のビジネスでどれくらいお金を稼いできたかを表しています。
簡単に言ってしまえば事業における“収入ー支出の差額”のことです。
ビジネスで稼いできたお金が黒字であれば、事業投資や配当金の支払いに使えるので、他の指標と同じように長期的に右肩上がりになっていればOKです。


また、キャッシュフローは4種類あるので覚えておきましょう。
- 【営業CF】収入ー支出で残ったお金
→プラスならOK - 【投資CF】設備投資や資産売却したお金
→マイナスでもOK - 【財務CF】借金や借金返済したお金
→マイナスでもOK - 【フリーCF】最終的に自由に使えるお金
→プラスならOK
・投資キャッシュフロー
投資CFは事業投資・設備投資など先行投資に使用したお金の流れです。
事業投資にお金を使うと“投資CF”がマイナスになりますが、事業拡大にお金を使っていると判断できますのでマイナスでも問題はありません。
私たちの家計で考えると貯金や投資にお金を使っているのと同じことです。
・財務キャッシュフロー
財務CFは、借金に関するお金の流れです。
借金をすると手元の現金は増えるので財務CFとしてはプラスになり、借金を返すと手元の現金は減るのでマイナスになります。
一般的には借金は早く返した方が良いと思うかもしれませんが、事業投資をする場合は積極的にお金を借りた方が良い時もあるので数字だけ見て判断するのは難しいです。
似たように私達の生活でも住宅ローンは低金利で借りれるお金なので、一概に早く返金することが良いとは限らないのと同じ考え方です。
・フリーキャッシュフロー
フリーCFは営業CFと投資CFの合計で最終的に会社が自由に使えるお金はいくらあるのかを表しています。
フリーCFがプラスなら黒字家計、マイナスなら赤字家計ということです。
配当金はここで余ったお金から支払われるのでプラスになっている方が好ましいです。
私たちの家計で言うと給料から生活費や貯金を抜いたお小遣いになります。
このようにキャッシュフローにはいくつか種類がありますが、高配当株の分析として一番見るべき指標は営業活動によるCFです。
お金を稼いで黒字を作れるビジネスをしているかを確認しましょう。
まとめ


- EPS→長期的に右肩上がり
- 1株当たり配当金→減配がなく増加傾向
- 売上高→増減が激しくなく右肩上がり
- 営業利益率→10%以上なら優秀
- 自己資本比率→60%以上は欲しいところ
- 配当性向→70%以上なら要注意
- 現金等→右肩上がり
- 営業活動によるCF→毎年黒字で赤字無し
以上のポイントが高配当株を分析する時に見るべき指標になります。
これらの指標を使うことで投資に適している銘柄かどうかを判断することが出来ます。